アルバイト/トイレ/魔物

只今アルバイトをしているが、死ぬほど暇でどうしようもない   やるべきことがある時以外は本を読みながらSNSをチェックし、冷蔵庫の上に無尽蔵にある飴を取りに行き、舐めながら寝ている

 

異常事態が起きない限りいつもこんな感じで、余裕で8時間がすぎるのだが、今日はいつもと違うところが一つある。今日のアルバイト先には、「女子トイレの電気を逐一消す魔物」が同じフロアのどこかに潜んでいるということだ。

その証拠に、トイレに行くたびにトイレが隅々まで真っ暗になっている  このバイトを2年くらいしているが、こんなことは初めてである。

 

本当に落ち込んでしまう。わたしが電気を消す人を"魔物"と認識してる理由は真っ暗が苦手だからである。一人の時は部屋の電気も基本的につけたまま家を出るし、寝る時も電気をつけたまま寝る。暗闇の時に比べて睡眠の質が少々悪いのは勘づいているので「ヨシ!今日は電気をつけて寝るぞ!」という時は、思いっきり息を吸い込んでプールに潜る時みたいに、えいっと電気を消して急いで寝る。でもそれは本当に疲れるから、諦めて電気をつけて寝ている。

 

このようなわたしは、先ほどから突然目の前に現れる「真っ暗のトイレ」に遭遇するたびに「エッ」と一瞬叫びそうになり、そのあと悲しい寂しい怖いというどうしようもない気持ちがすぐに心をぐるっと取り囲み、電気をつければそれらは晴れるものの、さっきまでそのような寒色の感情になっていたという事実に、少しだけれどダメージを負ってしまう

 

わたしはいつでもめちゃくちゃトイレに行くのだが、今日はその度に少しずつダメージを負っているのでとても疲れている。

「いや、今日はそういう日って分かってるなら覚悟してから行けよ」と言う人はいるだろうが、覚悟しているやつは飴を舐めながら寝ない、し、飴を舐めながら寝ているやつは怖い思いをしてもすぐ忘れる。わたしが『三匹の子豚』に出ることになったら最も愚かとされている一匹目の子豚の役に配役される。あんなに愚かな話は無くて、わたしが大学3年生の時毎朝『三匹の子豚』を見てから大学に行っていたのは、自分の同じ程度の"愚者"を見て安心するためかもしれない。

 

その"魔物"はどこにいるのだろうか、フロアに女の人は何人かしかいない、全員ひとつのスペースに集めて犯人を特定してその人と議論をしてみたい  そして負かしたい  そのあと2人で映画を見に行って仲直りしたい  毎晩電話してみたいかもしれない

 

しかし、わたしはいま魔物が1人であるという想定で喋っているが、同じフロアにいる女の人全員が"魔物"だったらどうしようと思ってきた、一刻も早くここから逃げ去りたい、狼は、怖い…。

 

https://youtu.be/Sh2uQ6b2P2U